神林敏夫(新潟県) 028

狂詩曲のリズムの如く降りいでて雨滴は青き大河を叩く
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    狂詩曲のリズムの如く降りいでて

          雨滴は青き大河を叩く

      (四万十川短歌大会応募作)


■青天の霹靂

 思えば遠い日、60歳台に足を踏み入れたばかりの私と妻との初めての旅行らしい旅は、フルムーンの四国一周旅行でした。好天に恵まれ、各地の名所・寺院・そして温泉を訪れ、やがて旅も終わりに近づいた頃、楽しみにしていたひとつ、中村市に昼食をとり、あこがれの清流四万十川を目の辺りに、することになったのでした。

 当時は、確かまだ立派な観光船も就航していなかったのだろうと思いますが、川沿いに走るバスの観光ガイド嬢の説明を聞きながら、日本有数の清流を眺めながら心奪われ、一汐の旅情を募らせるのでした。

 ところが、天候急変、快晴だった青空が、一挙に黒雲に覆われ、やがて大粒の雨が機銃掃射のように川面に叩きつけられてゆく。正に青天の霹靂をみる思いでした。鍵盤上を狂ったように流れる狂詩曲のリズムに酔う感慨ひとしおに川面を見つつゆくのでした。

 やがてさしもの驟雨も嘘のようにやみ、天の悪戯のようなドラマを見たような、静かな青い流れが目の前にありました。醒めやらぬリサイタルの昂奮の余韻を楽しむように走るバスの車窓に、四万十川の流れに別れを告げたことでした。

 あれから、もう14年の月日が流れて行ってしまいました。

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[プロフィール]
 
『私は、以前、当地に木材会社を経営しており、山林伐採、製材、木材販売を主業として参りました。時代の流れと共に、業態の変化に伴ない、木材生産から退くまで、約40年間、私が山林立木の買い付けを担当し、伐採搬出を指揮することが、主たる任務でした。土地柄、仕入れは地元山林所有者農家を訪れ、夜討ち朝駆けの連続の日々でした。

 やがて、仕入れは原木市場から銘木市場へと、仕入れは移行してゆくのですが、人生の大半を、山林と木と共に生き、木の香の染み込んだ40年の思いでは、懐かしく、今も尽きることがありません。(神林)』

◆第16回 日本歌人クラブ主催 全日本短歌大会 秀作賞三首一組

  泰澄の植ゑしと伝ふ巨杉(おほすぎ)は二尺五寸を巻きて余れる

  わが代に終る山師の名残りとし潔斎の身に神酒をしめらす

  乾坤に刻は止まりて斎庭ゆすり千歳の巨木(き)が倒れる地響

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