奥宮武男(高知市) 109

四万十の瀬につかまむとせし鮎の逃れゆきつつ月にジャンプす
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    四万十の瀬につかまむとせし鮎の

       逃れゆきつつ月にジャンプす


■少年の頃・・・

 友達や親兄弟とともに、夕闇に包まれた四万十川の瀬に、這い蹲ばって両手の平で川床を広く撫でながら、指に触れくる若鮎をそっと捕まえた時の感触は、言葉では言い表せないほどの楽しさ。とれた鮎を皆で見せ合って喜んだことでした。

 また、私の父は雉笛が上手でした。冬の明け方、四万十川の向かいの森の中より、父の吹く雉笛を、寝床の中で良く聞いたことが懐かしい。

 何時しか、父の年となり、四万十川を思うとき、川を渡る雉子笛の音が心に響いてきます。

 
  明けの森に父の吹きゐし雉笛がふと聞こゑくる父の年越ゆ


 何十年ぶりかの、帰省の折り・・・

 久しぶりに眺める四万十川は、そんな少年の頃を思い出させてくれ、ふるさとの風景とともに、懐かしさがいっぱい。夕暮れの道を歩みながら、ひたすら感傷に浸りました。


  かじか鳴きて夕暮れ歩む四万十の水面の月としばらく並ぶ


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[プロフィール]

 奥宮武男氏

 昭和4年生まれ。
 高知県窪川町(現四万十町)出身。


 調理師修業で、東京銀座で働きました。お国言葉丸出しの私は、皆によく笑われました。厳しい毎日でしたが、一生懸命に仕事に励み、親方さんに大事にしていただきました。60年前をふり返っての作です。


 若き日の銀座の調理師見習ひのわれの訛に皆が笑ひき


◆代表作品(昭和48年歌会始佳作入選歌・お題「子ども」)


  鉱石をかたく握りて子どもらは閉山の地に別れ告げゆく


 昭和47年、元禄時代から続いた高知県大川村の白滝鉱山が閉山、大川村小学校も大火に見舞われました。(奥宮)

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